痛みはどのように記憶されるのか

痛みはどのように記憶されるのか

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感じているのは痛いだけではない



痛みは、体のどこかに刺激や異変を感じ、その感覚が信号となり神経を伝わって脳で感じ取ります。


脳に伝わった信号は痛いという感覚以外にも
  • この痛みは悪いことが起こっているのか
  • 緊急に逃げなければいけないのか
など身体に危険が迫った時に反応する脳の部位も活性化し、脳内に信号がかけめぐり不快な感覚を発生させ、体に警告するという働きが、現在の脳科学で分かってきています。


痛い時にそれ以外の感覚が活性化することがわかってきたのは1990年代に
機能的MRI
による画像診断で脳の活動を見る事ができる様になってきたのが始まりで、それ以後多くの研究者が
  • 火傷の痛み
  • ピンセットでつまんだ時の痛み
など様々な痛みに対して反応する脳の部位を調べ、痛みという刺激に対しては脳の
  • 前帯状回
  • 島皮質
  • 側坐核
  • 偏桃体
など複数の部位が同時に活性化することがわかってきました。


この研究によって、脳は痛みを感じると情動に関係する部位を活性化させて、警告信号として受け取っているという事がわかってきました。



痛みの記憶



痛みは何らかの危険なサインですので、生きていく経験を積んでいく上で、痛い場面を記憶する事は身の安全を守るうえで非常に大切になります。


脳で記憶する場所は
海馬
で、海馬に障害が起こると、今日の予定や会った人を覚えられないという事が起こってきます。


しかし、100年前に、新しい事が全く覚えられない
コルサコフ症候群
という病気の患者に行った実験では、興味深い結果が得られました。


主治医が毎日患者さんの所に行っても、患者さんは「はじめまして」という挨拶をします。


そこで、挨拶と共に手のひらに画びょうを隠して握手するという事をし、1回目は当然のことながら患者さんは痛くてびっくりします。


新しい事が覚えられないので次の日も、同じ様に【痛い握手】をしようとすると、患者さんは手を出さなかったという結果になりました。


この実験から人の名前や出来事などを覚える記憶と痛みの記憶は脳の別々の場所が働いているのではないかと考えられ、その後動物実験や、機能的MRIで確認すると
痛みの記憶は偏桃体を中心に蓄えられる
事がわかってきました。
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