意外な発見

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サッカー選手と貧血


松田医師はサッカー女子日本代表17歳以下のチームドクターをしていた当時、意外な発見をしています。

それは貧血についてなのですが、貧血の原因として痩せているとか食が細いなどのイメージがあると思いますが、サッカー選手は体型ががっしりしていて痩せた選手はあまりいません。

そのようなことからサッカー選手には貧血の人はいないだろうと思っていました。

しかしサッカー選手にも非常に貧血が多いということがわかり、しかも日本代表に集まってきているようなトップ選手にさえ貧血が多く見られるということが判りました。



走れない選手の原因とは



ワールドカップアンダー17の大会を11月に控えたチームに3月から合宿にチームドクターとして加わりました。

この時にある選手が思うように走れないので体調が悪いのではないか?と相談があり、確かに走れていないことが傍目にもよくわかりました。

その選手は非常に真面目で、お母さんもいちど合宿に来られ「うちの娘はどうして走れないのでしょうか?」と相談されました。

体系的には身長も高く、がっしりしていましたからどうしてパフォーマンスが出せないのかよくわかりませんでした。

4月になってそのチームのメディカルチェックが行われ、その結果運動選手ではありえないような貧血の数値が確認されたのです。

具体的にはヘモグロビンの数値が普通の女性の3分の2程度しかなく、どうしてこの選手が貧血などになるのか全くわからない状態でした。



貧血と運動



貧血は血液中の赤血球が少ない状態を言い、赤血球が少ないと体中の臓器や筋肉に酸素を運ぶ能力が低くなりその結果サッカー選手などの場合には思うように走れないということになります。

女性の場合は月経などがあり貧血気味になることもありますが、この選手の場合には子宮筋腫など病的な貧血のレベルで、運動選手ではありえないような数値でした。



筋トレの落とし穴



貧血は鉄分不足によって起こる事はよく知られていますが、筋肉にも鉄分が必要で、筋肉の中に「 ミオグロビン」という物質があるのですが、これに鉄分を要求します。

どのようなアスリートの場合にも「筋トレ」は欠かせませんが、「 ミオグロビン」が鉄分を必要とし、その結果赤血球の鉄分を消費してしまいます。

この選手の場合には一見、筋肉は付いてがっしりした体型になったのに赤血球の鉄分が不足するという状況に陥っていたのです。

肝臓の中には「貯蔵鉄」というものがあり不足分はそこから供給されるのですが、それを使い果たしてしまうと貧血になり、運動選手の場合には持久力が落ちてきます。

筋肉があっても貯蔵鉄がない場合には、ヘモグロビンが十分になくその結果、筋肉に酸素が供給できず走れない様になってしまうのです。



誤解と偏見



スポーツ選手の場合に筋肉があっても持久力がないとか走れないような場合にはこの様なことが原因になっているかもしれません。

それをわからないままにしておくと、「根性がない」とか「さぼっている」様に見られてしまうかもしれません。

また一般の人では鉄分が不足している状態では少しの運動でもきついと感じる様になります。

チームドクターとして参加した当初は、一般常識からしか選手を見ることができず、体格の良い選手に貧血があるなどとは思いもしませんでしたが、よく調べてみるとパフォーマンスの出し切れていない選手にはこのような原因があることを、医師としても初めて知ったのでした。
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