酸素を確保せよ!

酸素を確保せよ!

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高所では酸素が必要!



エベレスト山頂では平地の3分の1程度の気圧で、気圧が低いので体に吸い込める空気も少なくなります。

気圧が低いと酸素分圧も低く、生命維持にかかる酸素の取り込みも極端に悪い状態になります。

標高7800メートル以上はデスゾーンと呼ばれていて、高所に体が慣れていない平地から、いきなりその標高に行ったとすると1分以内に意識を失い、5分後には死んでしまうような厳しい環境なのです。



なぜ無酸素でいられるのか?



エベレスト無酸素登頂を果たしたメスナーの登場まで、生理学者は無酸素ではエベレスト登頂は不可能だと思っていました。

しかしその後、生理的反応で高所では息を吐き出す力が強くなり、その結果二酸化炭素も多く吐き出され、肺内の二酸化炭素濃度の減少により酸素を取り込める圧力が増加する事が分かってきました。

そしてエベレストの気圧は計算上より若干高かった事にもよりますが、エベレスト山頂あたりが人間が無酸素で行けるギリギリの標高だと言えます。



高度順化と驚くべき生体機能



標高の高い海外の山などでは高度順化と呼ばれる方法で高所に体を慣らしてゆきます。

これは酸素を使わずに今居る場所から標高の高い所まで、日帰りまたは一晩程度の行程で往復する方法で、高度順化の1回めでは非常に苦しく、高山病になったりすることもありますが、2度め3度めにその標高に登る時には体が標高に慣れ、あまり辛く感じない様になります。

高度順化初期では肺の血管が狭く呼吸機能が低下しますが、何度か高度順化を繰り返すと肺の血管が広がり
・スムーズにガス交換ができる
・赤血球も増加する
などの変化が現れその結果、体が高度になれると高所で寝ることや運動することなども可能になってきます。

肺には『ヘモオキシナーゼ1』という酵素があるのですが、この酵素が働くと

・血管拡張作用
・抗酸化作用
・鉄の無毒化作用

があり、高所登山から帰って来た人は通常より6倍も『ヘモオキシナーゼ1』が分泌されていることが確認されています。

このように人間の体には生体防御機構が備わっており、高所登山から半年程度は高い生体防御機構が維持され続け、抗酸化作用が強く、血管も十分に拡張された状態で、再び高所の環境に行った時に備えられる様になっています。



高度順化の限界



生体防御機構が高まる高度順化ですが8000メートル以上では順化が難しく、高所登山において酸素の調達と調整はとても重要になってきます。

エベレスト登山において、酸素を使う量と行動を考えた調整は場面ごとに行わなければならず、酸素コーディネートは登山の成否に関わるといっても過言ではありません。
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